映画評367 ~ さまよう刃 (09.10.12)

今回は「さまよう刃」

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東野圭吾のベストセラー小説を映画化したものだ。

主演は、寺尾聡
共演は、竹野内豊、伊東四朗、長谷川初範、木下ほうか、酒井美紀
その他、山谷初男、岡田亮輔、黒田耕平、佐藤貴広など


<ストーリー>
平凡な建築士である長峰重樹は、最愛の娘が、少年達によって、凌辱され殺された。ある日、謎の密告電話により、失意のどん底に落ちていた長峰は、犯人の名前を知ることになる。「我が国の法律では未成年者に極刑は望めない!」復讐が何も解決しない虚しい行為だと分かっていながら、父親は自ら犯人を追う。そして、長峰を追う2人の刑事・織部孝史と真野信一。はたして・・・


重いテーマを扱った作品だ。
だから、面白い!という感想はないかも知れないが、感動というか重い気分になるだろうと思っていた。

しかし、その気持ちも徐々にトーン・ダウンしていく。
何だか、展開がおかしいのだ。

最初は、ちょっとした違和感だった。

犯人たちの車を目撃した情報が入ってきた時のこと。
電話を受けた刑事は「何? 黒のセダン、70年型・・・」と言っていた。
つまり、この目撃者は、どこのメーカーの何という名前の車かを言わず、ただ70年型の古いセダンだった、と言っているわけだ。
いったい、どこの誰が、こんなややこしい伝え方をするのだろう。

単に、たとえば「トヨタのレビン」だとか「ニッサンのシルビア」とか言えばいいだけ。
だって、ちょっと見ただけで70年型だとわかるほど、車に詳しいヤツだ。
結果的に、都内だけで数百台もの70年型のセダンを探すハメになってしまう。

もしかして、会社名をわざと出さなかった?
NHKじゃあるまいし、別に構わないと思うのだけど。

次に、長峰に密告をした犯人の仲間の少年・中井。
いったい、どうやって長峰の電話番号がわかったのだろう。
警察は、早くから、この少年の存在をつかんでいたのだが、それだけに、少年に対して電話番号を教えるなんてことは、ゼッタイにしないだろうに。

しかし、このゼッタイにあり得ないことを、警察は次々とやってしまう。

竹野内豊演じる織部刑事が、署に戻った時に、先輩である刑事が「ほれ、あの少年たちに乱暴されて自殺した娘さんの父親だ」と言って、ある部屋から出てきた。
織部が覗いてみると、その父親は、部屋で自分の娘が蹂躙されている姿が映ったビデオを見ていた。
ということは、警察が、わざわざ父親を呼んで、そのビデオを見せた、ということになる。

こんなことあり得ないだろう。
いったい、何のために見せる必要があるんだ?
自分の娘かどうかを確認させるため?
そんなやり方があるとは到底思えないのだが・・・

さらに、長峰が犯人の一人である伴崎アツヤを殺した後、残りの一人である菅野カイジを探しにいく際、警察に手紙を出している。
何のために出したのかわからないのだが(自分の気持ちを訴えたものだが)、この手紙が、あろうことかマスコミに漏れてしまう。
誰かが漏らしたのか、それはわからないが、マスコミも、普通あんな手紙をテレビで流したりしないと思うのだが。
警察だって「流すな!」と言うだろうし。
だって、まだ容疑者の段階だし(指紋が一致しただけ)、テレビで流す理由など、どこにもないはずだが。
これって、「マスコミはバカだから」ってことが言いたいわけ?

そして・・・

菅野カイジが長野県のペンションにいることがわかった長峰は、急いで長野に向かう。
でも、長野って広いのに、いったいどこを探すつもりだったんだろうか。

その後、菅平にいることがわかった長峰は、菅平のペンションに泊まる。
そこの管理人の娘は、新聞を見て、泊っているのが長峰だと知る。
つまり、すでに指名手配されているということだろうが、だとしたら、長野中のペンションを探し回っている長峰の存在は、すぐに警察に知れてしまうだろうに。

酒井美紀演じる管理人の娘は、最初は長峰を説得しようとするのだが、その後、父親が連れて帰ってきた時には、警察に通報している。
このあたりの心理描写が、さっぱりわからない。
美紀の父親も、どうして長峰に猟銃を渡したのか、その心理状態がよくわからない。

細かいところでは・・・

ペンションでカイジの帰りを待ち構えていた警察は、すんでのところで逃がしてしまうが、そこにいた長峰が後を追う。
その長峰を、織部刑事が追うのだが、途中踏切によって遮られ、長峰を見失ってしまう。
終盤で織部刑事の行動が判明する、とても重要なシーンだが、この描写が、またあり得ない。

たかが2~3両しかない電車が通り過ぎた後、すでに長峰の姿が消えているのだが、まわりには、たいした建物もなく、しかもケガをしているその身で、いったいどこに消えたというのだろう。
田舎の踏切をナメるんじゃない!

だいたい、カイジはペンションに戻る直前に、どうして女に携帯電話なんかしたんだろう。
ほとんどペンションの近くにまで来ていたというのに。
しかも、彼女の裏切り(?)で、危険を察したカイジを追いかけたのは、織部刑事一人。
他の警官たちは、まったく何の反応もしていなかった。

そして、最後。
中井をおとりにして、カイジを捕まえようとする警察だが、突如中井が警察を巻こうとして走り出す。
しかし、警察は、全員が同方向に追いかけていくだけ。
どうして、あらかじめあちこちに配置していなかったのだろう。

にもかかわらず、長峰だけは、逆方向から現れて、カイジを追い詰める。
このあたりの状況が、まったくわからない。

こんな感じで、全編を通じて、とにかく警察が無能なので、長峰は密告に応じて自由に歩き回れるし、犯人の仲間である中井の行動さえも掴んでいない。
これでは、長峰の心理状態云々よりも、アホらしさだけが印象に残り、映画に対して感情移入ができない。

結局、最後の場面も、何だか中途半端なスローモーションが続き、「あれがオチなの?」という感じだった。

この監督は、いったい何を狙っていたのだろうか。
一つひとつの描写が、どうにも納得がいかない。

せっかく、寺尾聡が、いい存在感を出していたというのに。
竹野内豊も、意外といい感じだった。
恋愛モノや、ええ男を演じている時よりも、むしろこういう役の方がいいかも知れない。
伊東四朗は、好きな役者さんだ。
元々お笑いで一世を風靡し、その後も役者としていい味を出していると思う。
同じお笑い出身のいかりや長介などは、見た目だけでいいように思われているものの、実はあまりウマいとは思えなかったが、伊東四朗はセリフにも貫禄がある。

そんなこんなで、重た~い気分で、ある意味感動するかと思ったのに、残念ながらアラばかりが見つかって、あまりいい気分ではなかった。
ということで、評価は「C」とします。

後でネットなどを見てみると、賛否両論のようだけど、原作とはだいぶ違うようだ。
必ずしも、原作に忠実にする必要はないと思うが、ここまでわけがわからないと、もう少し細部まで詰めてほしいと思う。
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