映画評641 ~ 風立ちぬ

今回は「風立ちぬ」

映画130804

宮崎駿監督がゼロ戦の設計者・堀越二郎と作家の堀辰雄をモデルに、1930年代の日本で飛行機作りに情熱を傾けた青年の姿を描くアニメ。美しい飛行機を製作したいという夢を抱く青年が成し遂げたゼロ戦の誕生、そして青年と少女との出会いと別れをつづる。主人公の声には『エヴァンゲリオン』シリーズなどの庵野秀明監督を抜てき。ほかに、瀧本美織や西島秀俊、野村萬斎などが声優として参加する。希代の飛行機を作った青年の生きざまと共に、大正から昭和の社会の様子や日本の原風景にも注目。

声の出演は、主人公・堀越二郎:庵野秀明
その他、里見菜穂子:瀧本美織、本庄季郎:西島秀俊、黒川: 西村雅彦、里見(菜穂子の父):風間杜夫、二郎の母:竹下景子、服部課長:國村隼、堀越加代:志田未来、黒川夫人:大竹しのぶなど


<ストーリー>
大正から昭和にかけての日本。戦争や大震災、世界恐慌による不景気により、世間は閉塞感に覆われていた。航空機の設計者である堀越二郎はイタリア人飛行機製作者カプローニを尊敬し、いつか美しい飛行機を作り上げたいという野心を抱いていた。関東大震災のさなか汽車で出会った菜穂子とある日再会。二人は恋に落ちるが、菜穂子が結核にかかってしまう



これは、なかなかいい話だった。

いや、思ったよりもいい映画だったと思う。

それくらい、事前のイメージは最悪だった。

これみよがしに、ド素人の声優:庵野秀明をアフレコに起用したシーンを見せつけていたのは、おそらく出来栄えに自信があって、「ほら、下手くそだろ? こんなに下手くそなのに、それでも映画に影響しないほど、作品はいい出来なんだぜ」みたいな気持だったのだろうか。

結果的に、庵野の起用はマイナス以外の何物でもないと思う。

話がゼロ戦秘話に限定していたのであれば、まだマシだったかも知れない。(それでも、あの下手くそ加減は尋常ではなかったが・・・)

しかし、この映画では堀越と菜穂子の恋愛も、重要な部分である。

だから、この二人の再会のシーンとか、その後のやり取り、そして最後のシーンなどでの、この男の壊滅的なアフレコは、聞いていて「何じゃ、これは!」と叫んでしまいそうになるほどヒドかった。


さて、物語の方だけど・・・

これは実話を元にした話なので、展開には違和感はない。

しかし、所々その描き方に「う~ん」と思えるようなところがあった。

まず・・・堀越が菜穂子と再会したシーン。

二人は静養先(?)のホテルで偶然再会したわけだけど、たまたま風で吹き飛んだ菜穂子のパラソルを堀越が何とか取り戻したシーンでは、まだ二人とも気が付いていないような感じだった。

その後のホテルの食堂でのシーンでも、そんな描き方はされていなかった。

つまり、その後何らかのやり取りがあって、何かの機会に「あっ、あの時の・・・」とお互いが気が付くという展開だとその時は思っていた。

しかし、画を描いていた菜穂子に会いに行った堀越が、泉のほとりで菜穂子に会った時に、菜穂子の方から「実は気付いていました」みたいな告白がある。

もちろん堀越の方は気が付いていなかったのだけど、いきなり菜穂子の方が「あの時はお世話になりました」と言うシーンでは、ちょっと違和感があった。

だったら、パラソルを取り戻すシーンで、「あらっ?」という表情をさせるとか、もう少しそれと思わせるようなシーンにすれば良かったのに、と思う。

あと、菜穂子は結核で病の床に伏している、という設定なのに、血を吐いている場面を含めて、いつも元気だ!?

とても、もう後がない、という姿には見えない。

やはり、こういうのは志田未来では荷が重いと思う。
これこそが、大竹しのぶの役柄だと思うのだけど・・・


あと、細かいところだけど・・・

もしかしたら、事実なのかも知れないが、なぜか堀越だけ、皆から「堀越」ではなく「二郎」と呼ばれる。

同僚の本庄から呼ばれるのはまだいいのだけど、後輩からも、上司からも、皆になぜか「二郎!」「二郎さん」とか呼ばれている。

イチローみたいに、それが登録名ならともかく、普通は「堀越」という名前で呼ばれると思うのだけど、まるでそれで統一しているかのような描き方。


しかし、一番気に入らないのは、監督の考え方(?)。

劇中には、何度も「この時代の日本は貧乏(で不幸)だった」みたいなセリフが出てくるが、ホントにそうだろうか。

関東大震災があり世界大恐慌があり、そして戦争もあった時代だ。

とは言え、それはあくまでも後の時代の人間が、歴史上の出来事を時系列に並べてみて初めて「いろいろ不幸な出来事があったなあ」と言えるわけであり、当時生きていた人たちが、そう思っていたとは限らない。

私だって、小さい頃にパソコンなんてなかったし、家には携帯どころか固定電話さえなかった。
それでも、不便だと思ったことはなく、後から振り返ってみて「そう言えば、昔はそうだったよなあ」と思うだけ。

今の視点で当時を語るのには無理があると思う。


そんな中でも、一番おかしいと思ったのは・・・

最後の方で、堀越とイタリアの設計技師であるカプローニと夢の中で会話をするシーンで、こんなやり取りがある。

堀越「結局(ゼロ戦は)一機も帰ってきませんでした」
カプローニ「そして日本は滅んだ」

正確ではないかも知れないが、まるで「ゼロ戦ができたから戦争になり、そして日本は滅びた」みたいなやり取りだった。
少なくとも、私にはそう聞こえた。

しかし・・・日本が滅んだ?

いったい、いつ滅んだというのだろう。

実際、ボロボロにされたものの、その後奇跡的な復活を遂げているではないか。

それに、「ゼロ戦ができたから戦争になった」などという考え方は、社民党みたいな「警官が武器を持っているから犯人を撃ちたくなるんだ」という理屈と同じ。

本末転倒というのか、頭の中に何かが湧いているとしか思えないような思考だと思う。


本筋とは関係ないところで、いろいろとイチャモンをつけたけど、いずれにしても全体を通して気になる壊滅的なアフレコと、所々気になる違和感。

映画としては思ったより良かったけど、評価となると、ちょっと難しい。

とは言え、監督に対する批判も含めて・・・

ここはちょっと厳しく、評価は「C」にします。


でも・・・

普通の人には、いい映画と思いますよ。


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ありがとうございます

>  ご無沙汰しております。

こちらこそ、ご無沙汰をしております。


> と、ここまで入力していてヒラメいたのですが、あくまで私個人の仮説です。
> 話の全てが“死を覚悟したナオコが見たジロウの夢”だったのではないでしょうか?

宮崎駿らしい解釈かもしれませんね。

私の場合、やはりナオコと二郎の恋話が中途半端で、見ていて「はあ?」と思うところが多かったです。
いずれにしても、ド素人をアテレコに起用するのは間違いだと思います。

>  さてところで、大変遅くなり申し訳ないのですが
> はぶて虫さん、ご結婚おめでとうございます。
> 映画もどちらかが規定の年齢に達していれば夫婦割引もありますし♪
> どうぞお幸せに☆

ありがとうございます。
この年で結構なんて、ちょっと気恥ずかしいので、もちろん式も挙げてなければ、披露宴もしてません。

もちろん、夫婦割引は適用できますよ!
一人だと1800円なのに(会員割引で1500円のところもありますが)、二人で2000円は嬉しいですね。
ただし、二人の見たい映画がなかなか一致しないのが難点です!?

これからもよろしくお願いします。
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